第4章 私の恋 高専夏油
「何をするの?」
私は手を伸ばして硝子先輩の巾着を奪おうとしていると、後ろから声をかけられ私は慌てて口を閉じた。
夏油先輩と五条先輩だ。
「な、なんでもないです。」
聞かれたりしてはいないだろうか。
夏油先輩に告白ーー…
私はそれを想像してしまって、必死で首を振った。
「七海たちは少し遅れるから後で合流するって。先に行こうか。」
「あー、腹減ったー。」
濃紺の縦縞の浴衣を着た夏油先輩が先導してくれて、私たちはそれについて行った。
五条先輩はオフホワイトと言ったらいいのか、真っ白ではないけれど、柔らかい色をした白をきて二人とも同じような縦縞の浴衣だった。
「あっぶなー。」
くすくすと笑う硝子先輩を私は、肘でつんっとつついた。
あの会話を聞かれていたら私はもうお祭りなんて行くどころじゃなかっただろう。
「もぅ、硝子先輩っ。」
私はこの緊張をどうにかしたくて、硝子先輩を怒ることで誤魔化した。
しばらく歩いていると、同じように浴衣を着た人や、楽しそうに走り回る子供達がちらほら増えてきて私は胸が躍った。
いい匂いまでしてきた。
「おー、結構賑わってんじゃん。傑が小さいって言うからどんなもんかと思ったけど。」
街を上げての大きな花火大会とかではないけれど、出店もそこそこ並んでいて、舞台まで作られてとても賑わっていた。
「傑っ、あれ!」
「お、おい。」
ついてすぐ五条先輩は、顔を子供のよう輝かせ出店の方へと夏油先輩を引っ張っていった。
「五条、こういうの好きよねー。うちらも行こっか。」
『みんなと同じだとたのしーじゃん。』
ダルそうに言いながらも、1番祭りを楽しみにしていたのは五条先輩かもしれない。
私も口元を緩ませ、先をいく先輩たちを追いかけた。