第4章 私の恋 高専夏油
「…かくれなくて良くないですか?」
私がそういうと、五条先輩は少し考えて“まぁ”とだけ返事をした。
やましいことはしてないはずなのに。
「女の帯は後ろわかんね。見様見真似でやったから、あとから硝子に見てもらって。」
最後帯をぐっと直し、五条先輩は立ち上がった。
赤と白の大きな菊の模様があしらわれた古典的な浴衣だ。
濃い紫の帯も綺麗だった。
「わぁ…!どうですか?」
私はくるっと回ってみせた。
こんな素敵な浴衣は初めてだ。私は嬉しくて自分を鏡の前で何度も見てはにこにこした。
「いいんじゃね。しらね。俺傑のとこいくから。髪の毛どうにかしろよ。」
そうだ。髪の毛をセットしていない。
浴衣を着る前にすればよかったと思いながら、私は五条先輩にお礼を言った。
「先輩、ありがとうございました!こんなの初めてっ!今日かき氷奢ります!」
「いいよ、オマエ金ないの知ってるし。またなんか美味いメシよろしく。」
つんっと私のおでこをつつくと五条先輩はにかっと笑った。
「お子様ランチ作ります…。」
「バカにしてんのか。」
「エビフライにハンバーグに唐揚げと、ポテトをワンプレートに。」
「なにそれ、それがお子様ランチ?最高じゃん。」
ちょっと喜んでる五条先輩をみて、私はご飯に日本の国旗でもぶっさしてやろうと思った。