第4章 私の恋 高専夏油
夏油先輩も私が呪霊から落ちないよう、さりげなく腰を支えてくれた。
「すぐるんは可愛いなー。でも私っぽくないから。」
「じゃあ、傑先輩?」
「いいね。そう呼んでよ。」
ハードルが高い。
私を支えてくれている夏油先輩に私は緊張しながら、少しうつむいた。
「考えておきます…しばらくは夏油先輩…かな。」
「残念。私はちゃんとって呼ぶよ。いい?」
俯いているのに、私の顔を覗き込むように微笑んで見てくる夏油先輩に、私は目を合わすことができず、何度も頷きながらそっと彼の胸を押し返した。
「私も、大きな呪霊に乗って今度飛んでみたい。」
「人に見られないようにね。」
「確かに!」
人に見られたら、私だけがふわふわ浮いてるように見えるんだろうか、などと言いながら、私たちは高専に向かって飛び続けた。
「そういえば、今度悟たちと近くの神社の縁日に出かけるんだ。」
「縁日…お祭りですか?」
「そ。小さいお祭りだけどね。任務とかなければ、一緒にいこうか。」
「やった!行きたいです!」
家族とはあっても、誰かとお祭りに遊びにいくなんてしたことがない。
「出店ありますかねー。」
「あるらしいよ。」
「イカ焼き食べたい。」
「渋いね。」
「えー!お祭りでいつもいい匂いするじゃないですか!食べたこと無いから食べたいです!」
「無いの?」
「うちの親が祭りで出店開いてたから、お手伝いしてました。たこ焼きなら誰も負けませんよ!」
手でくるくるとたこ焼きをひっくり返す動作をすると、夏油先輩はくくっと笑った。
「の親は色々してたんだね。」
少し滑る呪霊から落ちないよう夏油先輩は私をぐっとたまに自分の方に引き寄せてくれた。
その度に、夏油先輩の温もりにどきどきしながら、私も体勢を整えていた。
「あんまり真面目に働いてないけど、明るくて面白い変な親です。」
でも大切な家族。
私が笑っていうと、夏油先輩も微笑んでくれた。