第20章 危機一髪
「ギィッ!」
「わ、何っ?」
しかし、俺の体は何かに受け止められてダメージがなかった。
見ると周りには数体のエンダーマン。よく考えなくても分かった。クリーパーちゃんのおかげだ。
「クリーパーちゃんは?!」
ふっと空を見上げると、クリーパーちゃんが上空へロケットのように飛んでいるのが俺の画面に映り込んだ。遠くでリンリンッと鈴の音がする。
「クリーパーちゃん、それ大丈夫?!」
と俺が声をあげたのは、クリーパーちゃんの体力を示すボスバーが、もう残りわずかとなっていたからだ。
大丈夫、という返事はなかった。次には、ドガーンと花火みたいな爆発が響き、エンドラが吠えたのが聞こえただけ。
俺はエンダーマンの群れを掻き分けて行く末を見守った。間もなく上空から落ちてきたのは、巨体なエンドラだった。
「まだだ……俺様は、まだ……」
息があるようだが、エンドラはぐったりとしていた。俺は一瞬、斧を持つか悩んだ。だがその瞬間、画面に「エンドラにトドメを刺そう」と文字が現れてやるしかなかった。
ガンッ……斧を一振りしただけで、エンドラはいつもの音を立てて消滅していった。いつもの光景なのに、なぜだか震えが止まらず、俺は配信をしていたことを忘れかけるところだった。
「クリーパーちゃんは……?」
俺はキョロキョロした。画面奥の視聴者さんたちもクリーパーちゃんの安否を心配していた。まさか、まさかなんてことがあるはずがないと歩き出すと、空からパラパラと何かが降ってきた。
黄金の色をしたクリーパーのフィギュアだった。
「え、ええ……?」
まるでエンドラを倒したあとに降ってくる経験値のように、黄金色のクリーパーの雨が降り注いだ。俺のただの朝活配信に手が込み過ぎだ、なんてウエノ氏に心で訴えていると、ある見慣れないものを発見した。
それは、エンドのゴール地点でもある岩盤の柱の上にいた。
「たいたい、どうしたの? ボーッとしちゃってさ!」
「クリーパーちゃん!」
クリーパーちゃんは、無事だったのだ。