第16章 急展開
「さっきのはよく考えなくてもエンドラだよな?」
俺は自分に言い聞かせるように言葉にした。まだ心臓がドキドキしている。落ち着かないと、と配信のチャット欄とゲーム画面を交互に眺める。
とそこに、一つ何か違和感のあるものが映りこんだ。それは抉れた地形の真ん中に落ちていて、近づけば近づく程、形がはっきりとしてきた。
「クリーパーちゃんの鈴が……」
俺は大袈裟に悲しむ声を出し、マジで心から悲しいような驚きの混ざった感情をなんとか落ち着けようととした。今は配信してるんだぞ、俺。と心の中で何度も念じて。
クリーパーちゃんが連れ去られた後に残されたのは、あのエンダーマンを呼び寄せる時に使った大きな黄色の鈴だった。俺はその鈴をインベントリに入れて、少しの間見つめた。
「今から助けに行くからな!」
俺はそう言って走り出した。エンダーアイはもうあるのだ。俺はこれから要塞の特定をして、エンドラ討伐しに行く。最初からその目的だったし、きっとクリーパーちゃんはエンドラのところにいると思った。
まさか、こんなイベントも仕込んでいたとはなぁとウエノ氏の凄さを改めて感じながら視聴者たちの反応も伺う。見なくても分かったが、クライマックスといったところだ。
さて、出発しよう。そう思って俺が走り出すと、リンリンと音が鳴った。え、クリーパーちゃん近くにいるの? と思ったが、違う! 音が鳴ってるのはこの鈴からだ!
「ヤッバ……!」
俺は咄嗟に鈴を投げ捨てようとしたが、なぜか手持ちにすぐ戻ってくる?! 慌てながら持ち物欄を開くと、鈴には「束縛の呪い」がついているじゃないか! しかも死んでも落とさないという説明つき!
俺は走り出した。ゲーム内はまだ昼間だったが、木陰かどこかで湧いたっぽいゾンビやスケルトンが襲ってくるからだ。
俺は敵MOBをボートで捕獲して(ていうか俺、このエンドラ討伐だけで何個ボート作ってる?)そのまま放置し、常に移動をし続けるということを強いられた。座標を見ながらエンド要塞の特定を急ぐ。この呪いの鈴……いやいや、クリーパーちゃんの鈴をちゃんと返さなきゃならないしな!
視聴者が打ち込んだ「シルバーフィッシュやばそう」というコメントは見なかったことにした。やめてよ、そういう不安煽るやつ!
でもまぁ、俺も薄々ヤバそうと思ってはいるけどねw
