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侍女の日常

第1章 出会い


「あらあら、それは大変でしたね」

水蓮さんが心から楽しそうにそう言った。


超絶美人さんが実は男の人だと発覚した後、彼女…もとい彼が、優しそうなご婦人を部屋へ呼び戻してくれた。
ご婦人の名は水蓮さんというらしい。

水蓮さんにばっちりと着付けをしてもらい、別の部屋で待機していた美人さんと合流して、彼女に一部始終を話し終えたところだった。

「本当にごめんなさい。あまりにもお綺麗だったのでてっきり女の方かと…」

何度目かの謝罪をすると、美人さんは「その話はもういい」と深いため息を吐いた。

「顔が赤いですよ、坊ちゃん」

揶揄うような水蓮さんの言葉に、美人さんは「水蓮!!」と声を荒げた。

「壬氏様、失礼いたします」

青い着物を着た真面目そうな男の人が美人さんにお辞儀をして部屋へと入ってきた。
壬氏様というのが、どうやら美人さんの名前らしい。

どう見ても年上である男性から様をつけて呼ばれるということは、もしかして身分が高い方なのだろうか。
水蓮さんにも坊ちゃんって言われているし。

「目を覚まされたのですね」

壬氏様とやらの向かいに座る私に気付いた男の人は、少し安心したかのように笑ってそう声をかけてくれた。

素性もわからない私のことを心配してくれていたのだろうか。
男性の優しさが嬉しくなり、自然と顔が綻んだ。

「っ!」

と同時に、男性の頬がほんのりと染まる。

「おい、高順」

咎めるような壬氏様の口調に、高順と呼ばれた男性はハッと目を見開き次いで深く頭を下げた。

「申し訳ありません。まだ慣れていないので」

なにに?
というか、今の流れで高順さんが謝らなきゃいけないところってありました?

2人の不思議なやりとりに首を傾げていると、水蓮さんがおかしそうにくすくすと笑った。

壬氏様はバツが悪そうに一度咳払いをすると、高順さんを隣に立たせこちらに向き直った。

「高順も来たことだ。本題に入るとしよう」

「本題、ですか…」

改めて言われなくても、相手の聞きたいことはだいたいわかる。
私が壬氏様の立場だったとしても、きっと同じことを聞くだろう。

「お前は一体何者なんだ。なぜ翡翠宮の庭に倒れていた」

そんなこと、こっちが教えて欲しいくらいだ。
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