第1章 出会い
「あの…これってどうやって着たらいいんでしょうか?」
部屋の隅に座っている美人さんへ向け、恐る恐る言葉をかけてみる。
美人さんは話しかけられると思っていなかったのか、目を丸くしてキョトンとしていた。
だから、なんでそんな表情でもずっと変わらず美人なんですか。
ただ、私のさほど優秀ではない頭では、言葉で伝えられるだけでは理解できないかもしれない。
図々しくも着付けをしてもらおうと、浴衣のような薄手の寝巻きの帯をほどき胸元を開けて、わからないアピールをしてみた。
前は全開になっているが、女同士だからたいして問題ないだろう。
より困っているように見せるため、少し首を傾げて眉を下げて。上目遣いなんかも足してみる。
途端、美人さんの顔がさーっと青ざめたように見えた。
さらに一拍おいてから、今度は頬を真っ赤に染め上げて慌てたようにこちらに向かってくる。
頬を染めたらまたすごい色気ですね。
なんて思っている間に目の前まで迫ってきていた美人さん。頬を染めているせいか、なにやら眉を釣り上げて怒っているようにも見える。
座っていたから分からなかったが、身長は随分高く、175センチはあるだろうか。
超絶美人で身長も高い。そんな女性に眼前に迫られると、やけに迫力があってちょっと腰が引けてしまった。
軽く怯える私の寝巻きの襟元を乱暴に掴むと、美人さんは露わになっていた胸が隠れるように両手をクロスさせた。
「男に簡単に裸を見せるな!お前はバカか!」
美人さんの叫び声に驚いて、一瞬身体が固まってしまう。
その後、彼女が発した言葉になにやら違和感のようなものを覚える。
おとこ?今、男って言いました?
男なんて、一体どこに???
目の前の美人さんは、いまだ真っ赤な顔をしてこちらを睨んでいた。
いやいやそんな、あるわけないでしょ。
こんなにもお綺麗な超絶美人なお姉さんが。
まさか男だなんて…。
「お…おとこぉぉぉぉ!!??」
私のとんでもなく間抜けな叫びが屋敷中に響き渡った。