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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)


 夕刻。

 地面には無数の剣の軌跡が刻まれ、空気にはまだ戦いの余韻が滞っていた。

 「はぁ、はぁ……!」

 膝をついたネロは、肩で息をしながらも まだ諦めない目 をしていた。

 バージルの前に立つたびに、何度も吹き飛ばされ、叩き伏せられた。
 腕には斬撃の浅い傷が無数に走り、服は泥と血で汚れている。

 それでも、彼は立ち上がる。

 「……もういい」

 バージルは 冷静に言った。

 「剣を持つどころか、構える余力も残っていない」

 「うる……せぇ……!」

 ネロは 荒い息のまま、震える腕で地面に手をついた。

 「まだ……できる……!」

 ——その姿が、一瞬、バージル自身の幼き日と重なった。

 「もっと強くなれば、守れたかもしれない」

 あの時、力がなかった自分を どれほど呪ったか。
 だからこそ、息子の気持ちが 痛いほど分かる。

 (……だが、力は代償なしに手に入るものではない)

 「剣を握れぬ者に、"強さ" などない」

 バージルが 閻魔刀を下ろした瞬間——

 「いい加減にして!」

 怒声とともにビアンカが乱入した。

 息子の傷だらけの姿を見た瞬間、彼女の怒りは頂点に達する。

 「アンタ、10歳相手に手加減ってものを知らないの!?」

 「必要ない」

 バージルは 即答する。

 「……っ!!!」

 ビアンカは こめかみを押さえて息を吐いた。

 「ネロ、動かないで。傷の手当するから」

 「ま、待って母さん! まだ俺は……」

 「言うこと聞きなさい」

 母親の声には、絶対の力があった。

 ネロは 悔しそうに唇を噛みながらも、大人しく地面に座る。

 ビアンカは 慎重に傷口を拭い、薬を塗り、包帯を巻いていった。

 バージルは、そんな光景を 静かに見下ろす。

 「……強くなりたいと言ったのは、ネロ自身だ」

 「だからって、毎日毎日本気で叩き潰す必要はないでしょうが!!」

 「弱いままの方がいいと?」

 「そうじゃなくて」

 ビアンカは 強く睨みつける。それに対してバージルはドライな姿勢を崩さない。

 「だが、そのキリエとやらが悪魔に襲われるのは明日かもしれない、今この瞬間の可能性もないわけではない」

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