第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)
「パパ、オレに剣を教えて」
リビングの静寂を破ったのは、少年の真剣な声だった。
バージルは紅茶を飲む手を止め、ネロをじっと見下ろした。
彼の瞳には、迷いがなかった。
「強くなりたい」
ネロはもう一度、はっきりと言った。
「……キリエを守れるくらいに」
彼は拳をぎゅっと握りしめる。
「オレ、あの日……何もできなかったんだ。ただ見てるだけだった。キリエが泣いてるのに、クレドが必死なのに、オレは……!」
悔しさと怒り、そして悲しみが混じった言葉だった。
バージルは、しばらく沈黙する。
「ネロ……」
ビアンカが心配そうに口を開くが、ネロは振り向かず、ただバージルを見つめ続ける。
「お願い」
しばしの静寂。
バージルはゆっくりとカップを置くと、静かに立ち上がった。
「……ならば、ついてこい」
その言葉に、ネロの目が輝く。
こうして、彼の「強くなるための道」が始まった。
それはきっと、少年が予想していたよりはるかに厳しくつらい道なのかもしれない。