• テキストサイズ

【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第8章 少しずつ、家族に


──安らぎの中で

 扉を開けると、家の中は静かだった。

 「ただいまー……って、あれ?」

 ビアンカは買い物袋を抱えながら、リビングへと足を踏み入れる。

 そこには、ソファに座るバージルの姿があった。

 だが、いつものように静かにこちらへ視線を向けることも、気配を察して言葉を返すこともない。

 ──反応が、ない。

 ビアンカは不思議に思いながら近づき、彼の顔を覗き込んだ。

 そして、息をのむ。

 彼は、器用にネロを抱いたまま、寝落ちしていた。

 ネロも、父親の腕の中ですやすやと穏やかな寝息を立てている。

 バージルはその小さな身体をしっかりと支えたまま、目を閉じていた。

 信じられない光景だった。

 バージルは、これまで孤独に生きてきた。

 力を求め、常に危険の中を歩み、周囲の気配や殺気に敏感に生きてきたはずの男が──

 今、完全に気を抜いて、穏やかに眠っている。

 まるで、この場所が彼にとっての安らぎであるかのように。

 「……」

 ビアンカは、思わず口元を押さえた。

 あまりにも、愛しい。

 込み上げてくる感情を、抑えきれなかった。

 涙が、滲む。

 彼は、こんなにも安心しきっている。

 きっと彼自身、気づいていない。

 ここが、彼にとって帰る場所になっていることを。

 静かに、ビアンカはソファの近くの椅子に腰を下ろす。

もう少しだけ、この幸せな寝顔を見ていたかった。
/ 210ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp