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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第7章 それからというもの


 「じゃあ俺帰る!」

 ダンテは満足げに手を振ると、そのまま軽やかに扉を開け、出て行った。

 「お疲れさま」

 ビアンカの声が背後から落ちる。
 バージルが顔を上げると、買い物袋を両手に提げた彼女が微笑んでいた。

 「ネロのこと、見ててくれてありがとう」
 「……」

 バージルは少しだけ視線を逸らす。
 感謝されるようなことをしたつもりはない。
 ダンテに任せっきりにするのも不安だったから。
 それだけのことだ。

 「……礼は不要だ」
 「素直じゃないねぇ」

 ビアンカはくすっと笑い、買い物袋をテーブルに置くと、バージルの隣に腰を下ろした。

 「でも、やっぱりネロも安心してるみたい」

 彼女はそっとネロの頬に触れる。
 ネロは少しだけ顔を動かしたが、すぐに落ち着き、また静かな寝息を立て始めた。

 「……」

 バージルは何も言わず、その様子を見つめる。
 しばらくの沈黙。
 けれど、それは決して気まずいものではなかった。

 「アンタってさ」

 ビアンカがぽつりと口を開く。

 「結局なんだかんだでちゃんと面倒見てくれるよね」
 「……買い被るな」
 「買い被ってないよ。だって、こうしてネロの面倒見てくれてるじゃん」

 バージルは何か言い返そうとしたが、結局やめた。
 事実、ネロを見ていたのは自分なのだから。

 「……別に、」
 「ふふ、またそれ」

 彼女は笑って、バージルの方へと少し近づいて座りなおした。
 バージルは少し眉を寄せたが、拒むことはしなかった。

 「なんか、不思議だね」
 「何がだ」
 「こうしてアンタと普通に話してるのがさ」

 ビアンカはぼんやりと天井を見上げながら言う。

 「最初はとんでもなく冷たい奴だと思ってたんだけど……まぁ、今でも冷たいっちゃ冷たいけどさ」
 「……ならば、何が違う」
 「うーん……」

 ビアンカは少し考えてから、笑った。

 「前よりも、話しやすくなった気がする」
 「……」

 バージルは何も言わなかった。
 ただ、ほんのわずかに、目を伏せた。
 それが何を意味するのか、彼自身もまだ分かっていなかった。
 けれど──
 この静かな時間が、悪くないと思ったのもまた事実だった。
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