第7章 それからというもの
昼下がりのフォルトゥナ。
ダンテは腕を組みながらソファに座り、にやりと笑う。
「さて、今日は甥っ子の世話を手伝ってやるぜ!」
「へぇ、アンタが? 物好きね」
「たまにはな。で、何をすればいい?」
「じゃあ……ちょうどいいわ。ネロのオムツ替え、やってみる?」
「……オムツ?」
ダンテの表情が一瞬だけ曇った。
「そう、オムツ。ネロはまだ赤ん坊だからね。世話をするなら、避けては通れないわよ?」
「お、おう……まぁ、やってやるよ」
気合を入れて挑戦するダンテ。
その横で、バージルは無言で遠巻きに様子を見ていた。
(……関わらん)
まるで戦場を観察するかのような冷静さで、決して巻き込まれないようにしている。
──だが、その思惑はすぐに崩れることになる。
ビアンカの指導のもと、ダンテは慎重にオムツを開き、新しいものを準備した。
「ふむふむ……意外と簡単じゃねぇか?」
だが、その瞬間だった。
「っ!? うわっ!!?」
ネロが突然、勢いよくおしっこを放った。
そして見事にダンテの腕に命中。
「おいおいおい!! ちょっと待て!! こいつ、絶対狙っただろ!?」
ビアンカは吹き出しそうになりながら、「だから言ったじゃない、油断禁物だって」と肩をすくめる。
そんな中、バージルは相変わらず腕を組み、無言で眺めていた。そして突然、
「うーん、これはバージルの遺伝だな!」
ダンテが突如、指をバージルに向けて叫ぶ。
「……は?」
「こいつ絶対狙ったぜ!? 戦闘センスがもう出来上がってる! これは間違いなくバージル譲りだ!」
「くだらんことを言うな」
バージルの目が一瞬で鋭くなる。
ビアンカが吹き出しそうになるのを堪えていると、ダンテ「でもさ、冷静に考えてみろよ?」と続ける。
「ネロもお前と同じで本能的にそうしてんじゃねぇの?」
「……貴様は黙っていろ」
「いやいや、これもう確定だろ! バージルの血ってすげぇなぁ!!」
その瞬間、閻魔刀の鞘がダンテの後頭部に直撃した。
「いってぇ!! 何すんだバージル!!」