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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第6章 貴方は何が好き?


 ビアンカは蒸らしの工程を慎重に終え、濃厚なコーヒーをカップに注ぐ。

 「これは、ちょっと面白いよ」
「俺は面白さを求めてはいないんだが」
「いいからいいから」

 ベトナムロブスタ。
 アラビカとは異なり、圧倒的な苦味と強烈なコクを持つ。
 ベトナムではコンデンスミルクを入れて飲むのが主流だが、今回はバージル仕様のブラックで提供する。

 バージルはカップを手に取ると、まず香りを確かめた。
 鼻を微かにひそめたのが、ビアンカには見逃せなかった。

 ──嫌な予感。

 次の瞬間、彼はひと口だけ含み、すぐにカップを置いた。

 「……」

 「……ダメ?」

 「……粉っぽい」

 「えっ、粉っぽい?」

 「粗野すぎる」

 バージルの言葉に、ビアンカは手帳を開く。

 「ベトナムロブスタ:× 粉っぽさが気に入らない。粗野=雑味が多い?」

 「苦味は?」

 「問題ない」

 「コクは?」

 「悪くはない」

 「じゃあ、何がダメなの?」

 「舌に残る」

 「……」

 ビアンカは何度か頷きながらカップを片付ける。
 なるほど、バージルは“洗練された苦味”が欲しいのであって、荒々しすぎるものは好まないらしい。まあ、彼らしいっちゃ彼らしい。納得してしまった。

 「いやぁ、奥が深いねぇ」

 「無駄なものが多すぎる」

 「ハイハイ、次ね」

 ビアンカは明日の豆を選ぶべく、戸棚を開けるのだった。
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