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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第5章 ふとした日常


 悪魔の血の臭いがこびりついた衣服を払いながら、バージルは扉を開けた。

 薄明かりの灯る室内。空気はどこか温もりを帯びている。

 奥の方から微かに聞こえるのは、赤子の寝息と、誰かの静かな寝返りの気配。

 リビングの机には簡単な食事が用意されていた。冷めてはいるが、整えられた皿の配置には、用意した者の几帳面さがうかがえる。

 (……ビアンカか)

 出ていく前にはなかったはずだ。

 バージルはそれをしばし眺め、ゆっくりと椅子を引いた。

 日常の些細な光景。

 戦いに身を投じる自分には縁遠い、そんな空間のはずなのに──

 気づけば、当たり前のように帰ってきている。

 まるで、ここが自分の帰る場所であるかのように。

 ──いや、違う。

 否定するように眉を寄せた。

 ここはあくまで仮住まい。束の間の滞在に過ぎない。

 そう、これは一時的なものだ。

 なのに。

 「……」

 バージルは無意識に、手袋を外した指先でテーブルの表面をなぞった。

 誰かが使い込んだ形跡のある、小さな傷。

 そのすべてが、生活の痕跡だった。

 自分とは無縁であるはずの、穏やかで、くだらない、取るに足らない日常。

 だが──

 (……くだらん)

 そう思いながらも、バージルは椅子に腰を下ろし、出された食事に手を伸ばした。
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