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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第5章 ふとした日常


 夜の静寂の中、バージルはベビーベッドのそばに立っていた。

 淡い月光が、すやすやと眠る赤子の顔を照らしている。

 ──ネロ。

 己の血を引く存在。

 たったそれだけのことが、なぜか現実味を持たなかった。

(くだらん)

 無意識のうちに、そう思う。

 家族。親子。父と子。

 バージルにとって、それは遠い過去の記憶の中でしか存在しない概念だった。

 それなのに──

 この小さな存在を前にすると、不思議と長く視線を向けてしまう。

 寝息を立てるネロの小さな拳が、ぴくりと動いた。

 無垢なその仕草に、ふと胸の奥が微かにざわつく。

 バージルは、わずかに顔をしかめた。

(何を考えている)

 くだらぬ感傷に浸るなど、無意味だ。

 そう結論づけ、踵を返そうとする。

 だが──

 「ん……」

 微かな寝言のような声が、耳を打った。

 ベビーベッドの中で、ネロが小さく身じろぎする。

 無意識にバージルのほうへと手を伸ばすように。

 まだ意識もないはずの赤子が、何かを求めるかのように。

 バージルは、反射的に足を止めた。

 そして、ため息をひとつ。

 (……くだらん)

 しかし、

 ──健やかに育て。

 心の中に浮かんだ願いを、振り払うことはしなかった。
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