第4章 ダンテ、顔を出す
ダンテはしばらくネロを覗き込みながら、「いやぁ、兄貴がパパかぁ~」と何度も面白がるように繰り返し、バージルの怒気が限界に達する寸前まで遊び尽くした。
「そんじゃ、これからもちょこちょこ顔出すからよ!」
楽しげに手を振り、ドアの向こうへ消えていくダンテ。バージルは眉をひそめたまま、その背中を見送る。
──いずれにせよ、厄介な存在を招き入れてしまった。
ダンテの足音が完全に遠のくのを確認すると、バージルはゆっくりとビアンカへ視線を向けた。
「……ビアンカ」
その低い声に、ビアンカは「ひっ」と小さく肩を震わせた。
「な、なに?」
バージルは片腕を組み、反対の手で閻魔刀の柄を軽く指で弾くようにしながら静かに言う。
「貴様、いつからダンテと繋がっていた?」
「……え?」
「俺と暮らし始めてから、奴の姿を見たことはないはずだ」
ビアンカは一瞬目を泳がせた。
「あ、あー……そ、それは、その……」
「……」
「うしろめたいことは、なにも!」
「ならば、何故奴が俺の居場所を知り得た?」
ビアンカは、バージルの刺すような視線に耐えきれず、そろそろと目をそらした。
「……」
「……貴様か」
沈黙を挟んで放たれた言葉に、ビアンカはびくりと肩を揺らす。
「え、えーっと……」
「貴様がダンテと繋がっていたのは、いつからだ?」
「え、えーっと……その……」
バージルは組んでいた腕を解き、ゆっくりとビアンカへと歩を進める。
「俺と暮らし始めた後、ダンテの姿を見たことはないはずだ。ならば──」
ビアンカは一歩、無意識に後ずさる。
「そ、そもそも……知り合ったのは、アンタよりも前だから……」
「……何?」