第4章 ダンテ、顔を出す
「いやいやいや、ちょっと待て」
ダンテがバージルとの攻防を楽しんでいた最中、ふと部屋の隅に目を向けると赤ん坊が寝ていた。白い毛布にくるまれ、規則正しい寝息を立てている。静かに上下する小さな胸、赤くてぷっくりとした頬。誰の目から見ても、立派な赤子だった。
そして──わかりやすいほどにバージルに似ている。
「いや、ちょっと待てって……えっ?」
ダンテはバージルを振り返り、次にビアンカを見て、もう一度赤ん坊に視線を戻した。
「同棲どころか……生まれてんじゃねぇか!!?」
バージルは何も言わず、腕を組んだままダンテを睨む。ビアンカは「あー……」と気まずそうに視線をそらす。ダンテはおもむろにソファから立ち上がり、赤ん坊のそばへ歩み寄った。
「あ、いや、マジで? これ、バージルの……?」
「見るな」
「いや見るだろ!! つーか何だよこれ!!」
ダンテは両手で頭を抱え、大げさにのけぞった。
「兄貴が人間の女と同棲してるって話だけでも驚きだったのによ! 子供まで作ってんのかよ!!!」
「貴様のような半端者に、理解できる話ではない」
「誰が半端者だ! てか、こっちが理解できねぇから驚いてんだよ!!!」
バージルは依然として腕を組んだまま、ダンテを一瞥する。
「……貴様の理解など求めていない」
「ああ、そうかい! いやでもお前が親になるとか、マジで……」
ダンテはネロの寝顔を改めて覗き込み、しげしげと眺めた。
「すげぇな……こんな小さいのが、お前のガキかよ……」
なんだか感慨深そうに呟くダンテを見て、ビアンカは少し緊張を緩めた。しかし、バージルはまだ帰れと言わんばかりの目を向けている。
「……にしても、バージルが親かぁ……」
ダンテはそう言って、じわじわと笑い始めた。
「兄貴のガキってことは、コイツも将来、クソ真面目な顔して『力が全てだ』とか言い出すのか?」
「帰れ」
「お前みたいな親父に育てられたら、大変だろうなぁ~、なぁ?」
「帰れと言っている」
「それとも、意外とデレデレだったりして?」
「貴様を斬るぞ」
ダンテの茶々に、バージルの殺気がさらに濃くなる。そんな二人のやりとりを見て、ビアンカは「あー……」と、どうしたものかと頭を抱えた。この攻防、いつ終わるのだろうか。