第17章 第2章プロローグ
フォルトゥナ郊外。街から少し離れた被害のない荒野で、銀色の閃光と赤い残像が交錯する。
「そらそら! どうした、二人がかりでも俺には敵わないか?」
ダンテが楽しそうに嘯きながら、リベリオンを振るう。
「黙れ!」
バージルの閻魔刀が鋭く斬りかかるが、ダンテは軽やかにかわす。
「ぐっ……!」
ネロが閻魔刀を借りたとはいえ、未だに二人がかりで仕留めきれないことに苛立ちを覚える。
「まぁまぁ、まだまだウォーミングアップだろ?」
「さっさと始末されろ、鬱陶しい」
「言うねぇ! でも、そんな余裕こいてると──っとぉ!?」
ダンテの剣を、バージルとネロが同時に受け止める。その衝撃で周囲の地面が砕け散り、激しい衝撃波が荒野に広がった。
しかし、その一方で、薄く淡い魔力によって展開された結界の内部には、驚くほどの静謐が保たれていた。
ヴィオラはビアンカの膝の上に座り、じっと遠方の戦闘を観察している。彼女の視線の先では、バージルとネロ、そしてダンテが互いの力をぶつけ合っていた。
「すっごーい!」
ヴィオラが無邪気に両手を叩く。
「バージルの結界がなかったら、アタシたち消し飛んでるよ」
ビアンカは呆れたようにため息をついた。
「おじちゃま、がんばれー!」
「あら、ヴィオラはパパやお兄ちゃんじゃなくてダンテを応援するのかい?」
「だっておじちゃまかっこいいんだもん!」
結界の向こうでダンテがニヤリと笑った。
「だってよ、バージル? どうする? 娘に好かれてる俺をやっつけるなんてできるのか~?」
結界の向こうで、バージルの気配が一瞬で冷え込む。
「……貴様を斬り捨てる」
「やべぇ!!」
フォルトゥナ郊外。灼熱の陽光が降り注ぐ荒野にて、魔力の奔流が激突し、凄絶な衝撃波が大気を揺るがしていた。町への被害を避けるために選ばれたこの戦場では、異能の者たちが苛烈な戦闘を繰り広げている。
その激闘を見つめながら、ヴィオラは思い立ったように手を叩き、無邪気な笑顔を弾けさせた。
「ヴィオラね、大きくなったらおじちゃまと結婚するの!」