第16章 平和な日常を
ネロは真剣な顔でヴィオラを抱き上げ、慎重に腕の中に収めた。
「よし……いい子だな、ヴィオラ」
彼の大きな手に包まれるようにして、ヴィオラは紫色の瞳を瞬かせる。
小さな指がふにふにと動き、ネロの頬に触れた。
「お、おい……なんだ、くすぐったいぞ」
照れたように言いながらも、ネロの顔は綻んでいる。
赤ん坊の柔らかなぬくもりが心地よく、抱いているだけで自然と頬が緩む。
「うわー、すっかり兄バカだなぁ」
そんな微笑ましい光景を眺めながら、ダンテが愉快そうに笑う。
腕を組んで立ち、思い出したように指を鳴らした。
「そういや坊や、お前が赤ん坊の頃は俺に小便ひっかけてなぁ〜」
「は!? 何の話だよ!?」
「いやぁ、あの頃のお前はすごかったぞ。俺の顔面めがけて飛ばしてきたからな」
「マジでやめろ!!」
ネロは顔を真っ赤にして叫ぶが、ダンテはお構いなしに腹を抱えて笑い転げる。
「くっ……こんな可愛い妹の前で、そんな話すんな!!」
「ははは! まぁ、坊やもちゃんと兄貴やれてるみたいだし、いいじゃねぇか」
ネロは憤慨しながらも、腕の中のヴィオラを見つめると、すぐに顔が柔らかくなる。
ヴィオラは無邪気に笑い、ネロの指をぎゅっと掴んだ。
「お前が大きくなっても、ずっと守ってやるからな」
小さく囁くネロの声に、ヴィオラは「あぶー」と可愛らしい声をあげる。
そんな二人の姿に、ダンテは肩をすくめて笑った。
「いやぁ、坊やも立派になったなぁ……」
「いい加減にしろ!!」
こうして、今日も一家はにぎやかだった。