第16章 平和な日常を
「はぁ……」
ビアンカが大げさにため息をつきながら、ベビーベッドの中のヴィオラを見つめる。
「ヴィオラ、アンタばっかり愛されてずるいよ……」
「……は?」
唐突な言葉にバージルとネロが同時に眉をひそめる。
「いやだってさ?」
ビアンカはベッドに寝かされたヴィオラのぷくぷくした頬を優しくつつきながら続ける。
「バージルは毎日アンタの顔見てると幸せそうな顔するし、ネロだってべったりだし……」
「母親がそれを言うのか?」とバージルが呆れたように言う。
「だって事実じゃん? アタシがこんなに愛されてるって実感したことないもん!」
「……」
バージルとネロがちらりと視線を交わす。
「母さん、それ、普通にめんどくさい女のセリフだぞ……?」
「何ですって?」
じとっとした目でネロを睨むビアンカ。
ネロは「いや、だって……」と言い淀んで目を逸らす。
「……くだらん」
そう言いつつ、バージルは静かに手を伸ばし、ビアンカの頬をつまんだ。
「んむっ!? な、なに!?」
「貴様がそんな戯言を言うなど、らしくもない」
「……うっ」
正論をぶつけられ、ビアンカはむくれながらバージルの指を払いのける。
「もういいもんね! ヴィオラ、ママと一緒に寝よっか!」
そう言ってヴィオラを抱き上げるビアンカに、バージルとネロはため息をつくのだった。