第16章 平和な日常を
ダンテは腕を組みながら、にやにやとバージルを見上げた。
「へぇ~、"俺の妻"ねぇ……。なんだよバージル、お前もすっかり家庭持ちの男になっちまったってワケか?」
バージルは無言のまま、相変わらず壁にもたれかかっている。
表情こそ変わらないが、明らかに「鬱陶しい」と言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。
しかし、そんな空気などお構いなしにダンテは続ける。
「ったく、昔のお前なら『くだらん』とか言って鼻で笑ってただろうに。まさかそんなお熱い言葉を聞く日が来るとはな~!」
「……」
「で? これからはもっと言うつもりか? "俺の妻"、"俺の娘"ってさ?」
その瞬間、ダンテの足元すれすれを、またしても次元斬が走った。
「おっと、またそれかよ!」
ダンテは慣れた様子で軽くジャンプし、ひらりと回避する。
「お前なぁ……、会話のキャッチボールできねぇのか?」
「貴様を黙らせる方法なら知っている」
「怖っ!?」
バージルが一歩踏み出すと、ダンテは即座に後ずさる。
そんな兄弟のやり取りをよそに、ビアンカは楽しげにヴィオラの頬をぷにぷにとつついていた。
「ねぇヴィオラ、聞いた? "俺の妻"だってさ~」
「あぶぶ!」
まるで同意するように手足をばたつかせる娘。
ビアンカはますますご機嫌になり、ヴィオラの小さな手を握りながらにっこり微笑む。
「な~んか、今ならバージルのこといっぱいからかえそうな気がするよ?」
「……」
バージルは静かにビアンカを見たが、そこには確かにからかう気満々の笑顔があった。
ダンテはそんな二人を見て、お腹を抱えて笑い出した。
「はっはっはっ! ビアンカ、いいぞもっとやれ!」
「貴様は帰れ」
バージルの冷徹な一言に、ダンテはますます笑い転げるのだった。