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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第15章 魔女と半魔の契約


 ビアンカの言葉の意味を、バージルは理解していた。

 彼女はただ、契約の義務として魂を差し出すと言っているのではない。

 その奥には、もっと深い願いが込められていた。

 その決意は、あまりにも穏やかで、あまりにも静かだった。

 バージルは、繋いだ手にわずかに力を込める。

 「……貴様というやつは」

 ビアンカはくすりと笑い、もう片方の手で彼の頬に触れた。

 「そんなに悪い話じゃないと思わない?」

 バージルは答えなかった。

 だが、彼の瞳に浮かぶ微かな感情の揺らぎを、ビアンカは見逃さなかった。

 それが肯定なのか、否定なのかは、まだわからない。

 けれど、確かに彼の中に刻まれた何かがある。

 「考えておく」

 先ほどと同じ言葉をもう一度繰り返しながら、バージルはただ静かに彼女の手を握り返した。

 力を求めるあまり、人としての自分を否定し続けてきた過去。

 バージルにとって、人間であることは弱さでしかなく、捨て去るべきものだった。

 けれど──

 ビアンカやネロ、ヴィオラと過ごした日々は、彼を無理やり人間に引き戻すためにあったようなものだった。

 彼は知らず知らずのうちに、その温もりに馴染んでしまっていたのかもしれない。

 だからこそ、ビアンカの言葉は、彼の心の奥深くまで響いた。

 「魔女の契約に従って、死後の魂はアンタにあげる」

 「だからさ、その時はアタシと一緒に地獄に落ちてね」

 なんと甘美な誘いだろうか。

 彼女は、彼を人間に引き戻そうとはしなかった。

 むしろ、悪魔たらんとする彼の選択を肯定し、その道を共に歩もうとしている。

 バージルは繋いだ手に、もう一度わずかに力を込める。

 「……考えておく」

 だが、それはただの言葉の綾だった。

 考えるまでもなく、答えは決まっている。

 かつて、自らの意志で孤独を選び取った彼が、今度は自らの意志で誰かと共に歩むのだ。

 人としてではなく、悪魔として。

 ──この女は、最後まで自分を縛るのかもしれない。

 それでもいい。

 むしろ、それがいい。

 ビアンカはバージルの頬にそっと唇を寄せ、微笑んだ。

 「ずっと、アタシのこと縛らせてあげるよ」

 バージルは何も言わず、その誘いをただ静かに受け入れた。
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