第15章 魔女と半魔の契約
ビアンカは少し冗談めかした口調で言った。
「アンタも他の悪魔みたいに、人間の魂が欲しい時がある訳?」
バージルは一瞬考えた様子を見せたが、すぐに淡々と答える。
「考えたこともないが」
「まあ……そりゃそうか」
ビアンカは苦笑し、繋いだ手を軽く握る。
「じゃあ、アタシの魂を貰っても嬉しくないでしょ。食べるんじゃあるまいし」
さらりと言ったつもりだった。
だが――
バージルは沈黙する。
「……?」
違和感に気付き、ビアンカは彼の顔を覗き込む。
バージルはじっと、彼女の指先を見つめていた。
まるで、そこに何か答えを探すように。
そして、不意に呟いた。
「そうだな……なぜ、貴様のものなら欲しいと思ったのか」
まるで、自分でも理解できないものを口にするような声音だった。
ビアンカは一瞬息を飲む。
――バージルが、そんなことを言うなんて。
いつもなら「くだらん」と切り捨てて終わる話だ。
けれど今、彼は確かに、そう言ったのだ。
ビアンカの胸の奥で、小さな鼓動が跳ねる。
「……なんでだろうね」
彼女はそっと、バージルの指に指を絡める。
「それ、考えてみたら?」
バージルは答えなかった。
ただ、繋いだ手のぬくもりを確かめるように、指先を少しだけ動かした。