第15章 魔女と半魔の契約
薄灯りの中、バージルとビアンカは静かに過ごしていた。
ふと、ビアンカが手を伸ばす。
バージルは何の躊躇もなく、その手を取った。
つないだ手に、ふわりと不思議な色合いの魔力がまとわりつく。
それは柔らかくも力強く、まるでお互いの存在を確かめ合うかのようだった。
と、次の瞬間――
バージルの目元に、簡易的な図形の印のようなものが浮かび上がる。
それと同じものが、ビアンカの胸元にも浮かび上がっていた。
魔女と悪魔が交わした契約の証明。
「……本当に、契約が定着してる」
信じられないような声で、ビアンカが呟く。
「だとしたら、アタシは死後の魂をアンタに捧げる契約になってるはずなんだけど……どうなるんだろう、この場合」
バージルはしばらく黙ったまま、ビアンカの胸元に浮かぶ印をじっと見つめていた。
悪魔との契約とは、絶対のものであり、破ることも無視することもできない。
だが、彼は悪魔でありながら人間の血も引いている。
純粋な悪魔ではない彼が、魔女と契約を交わした場合――その契約の本質がどう変化するのか、彼にもわからなかった。
「貴様の魂がどうなるかなど、知ったことではない」
そう言い放つ声は冷たく響くが、彼はつないだ手を離さなかった。
「だが……少なくとも、貴様の命は俺のものだ。勝手に死ぬことは許さん」
その言葉に、ビアンカは目を瞬かせた。
そして、くすりと笑う。
「そっか……つまり、死んでも離してくれないってことか」
バージルは何も言わなかったが、その沈黙が答えだった。
魔力の淡い光が揺らめきながら、二人を優しく包み込んでいた。