第14章 新しい家族
ヴィオラが生まれて数日。
驚くべきことに、バージルは迷いなく娘の世話を引き受けていた。
抱き方やあやし方を学ぶのはもちろんのこと、寝かしつけやミルクの準備まで、驚異的な吸収力で習得していく。
「アンタ、ネロの時は何もしなかったのに!」
ビアンカが楽しそうに笑いながらそう言うと、ネロは複雑な表情を浮かべる。
「それ聞くとなんか複雑な気分なんだけど!」
バージルはそんな二人の反応などどこ吹く風で、静かにヴィオラを抱きながら、彼女の寝息を確認していた。
「学習したまでだ。何か問題があるか?」
「……父親としての成長、ってやつ?」
ネロが小さく呟くと、ビアンカは笑いながら肩をすくめた。
「いやいや、ネロの時も最初からこうだったら、アタシすっごく楽だったのにねぇ?」
「不公平だ!」
ネロが拗ねたように言うと、その場の空気が和やかな笑いに包まれた。
そこへ、ふらりと姿を現したのは赤いコートの男だった。
「よぉ! 久しぶりに顔を出してみたら、なんだかおもしれぇ光景が広がってんな?」
ダンテがにやりと笑いながら部屋に入る。
「……」
バージルは無言のままヴィオラを抱え直し、ビアンカは苦笑しながらダンテを迎えた。
「おっ、小さなヴィオレッタ姫はお昼寝中か?」
「うるさくしないでやってよ、ダンテ」
「わーってるよ、わーってる!」
そう言いながらも、彼は興味津々といった様子でヴィオラを覗き込む。
「へぇ……バージルの娘、か」
珍しく真剣な表情を見せるダンテに、ネロが少し意外そうな顔をする。
「なんだよ、感慨深くなっちゃってんの?」
「いやぁ、まさかあの堅物が子供をあやす日が来るとはな……」
ダンテが感慨深そうに言うと、バージルが睨んだ。
「貴様に言われる筋合いはない」
「おっと怖ぇ~!」
ダンテがひょうきんな表情を見せ、ビアンカとネロは笑う。
ヴィオラが生まれてからというもの、バージル一家はより一層賑やかになった。
彼らの日常は、これからも続いていく──。