第13章 娘
「アンタも抱いてみるかい?」
ビアンカがネロに提案する。
「え、いいのか?」
「まあ、まずはバージルが離すかどうかだけどね」
その言葉に、ネロとキリエがバージルの顔を見た。
バージルは表情を変えず、ヴィオラをしっかりと腕に抱いたままだった。
ネロが手を伸ばすと、バージルはゆっくりとヴィオラを見下ろし、一瞬だけ躊躇した。
だが、ビアンカが優しく「大丈夫だよ」と言うと、しぶしぶというようにヴィオラをネロへと渡す。
「お、おぉ……」
ぎこちなくヴィオラを抱いたネロは、まるで硝子細工でも扱うかのように慎重な動きを見せた。
「……すげぇな。俺に、妹が……」
キリエがそっと隣で覗き込み、優しくヴィオラの頬を撫でる。
「可愛いですね……ビアンカさんの面影があります」
「……ふふ、そうかい?」
「まあ、俺の妹なんだから、そりゃ可愛いに決まってるよな!」
ネロが得意げに笑うと、バージルが鋭く睨んだ。
「何を言っている」
「……え、違うの?」
「貴様の妹ではない。ヴィオラは俺の娘だ」
「お、おう……」
バージルの強い主張にネロはたじろぎ、ビアンカとキリエはクスクスと笑う。
和やかな空気の中、ヴィオラは小さな息を吐きながら、ネロの腕の中で静かに眠っていた。