第13章 娘
ヴィオラが生まれてからしばらくして、ようやくネロとキリエが部屋へ通された。
「母さん!」
ネロが勢いよく駆け寄ろうとしたが、その途中でぴたりと動きを止めた。
視線の先に、バージルの姿があったからだ。
椅子に腰掛けたバージルの腕の中には、極小の生き物が包まれていた。
「……妹ォ……」
先日耳にした衝撃の事実を、今まさに目の当たりにしたネロは、その場で固まる。
「おめでとうございます、ビアンカさん」
キリエはそっとベッドに近づき、穏やかに微笑んだ。
「あまり無理なさらないでくださいね」
「ありがとう……もう、だいぶ楽になったよ」
ビアンカはまだ疲れが見えるものの、安堵したようにキリエに微笑み返した。
ネロはバージルとヴィオラを交互に見比べ、未だに信じられないという表情を浮かべている。
「……マジで、生まれたんだな」
ビアンカがクスリと笑う。
ネロはバージルの腕の中のヴィオラを覗き込み、驚いたように目を見開いた。
「……ちっさ」
「アンタもそんなもんだったよ」
「嘘だろ……」
ネロは困惑しながらも、そっと手を伸ばし、ヴィオラの小さな指に触れた。
ヴィオラは目を細めるようにして、かすかに手を動かす。