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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第12章 守られること


「へぇ……」

「なぜ感心する」

「いや、アンタ、こういうの無頓着かと思った」

「整っていないものが目についたから直しただけだ」

「はいはい、器用で助かります」

バージルの手が髪から離れたのを確認して、ビアンカはちょっとだけいたずら心を起こす。せっかく直してくれた髪だが、留め具を引き抜けば再び元の髪形に戻る。

「じゃあさ、いっそアンタがアタシの髪整えてよ」

「……」

「どうしたの、やり方わかんない?」

バージルはじっとビアンカを見つめた後、低く言い放つ。

「動くな」

「えっ?」

有無を言わせぬ声音に、ビアンカは思わず背筋を伸ばす。

バージルの手がビアンカの指先から留め具を攫い、彼女の髪に再び触れ、今度はゆっくりと、しかし確実に、一本一本を整えながら結い直していく。

思った以上に器用な手つきに、ビアンカは目を丸くしながらも黙って従った。

やがてバージルは、髪を結び終え、指先を離す。

「……終わった」

「あ、ありがとう」

纏めているときからわかってはいたが、手鏡で確認しても予想以上に綺麗にまとまっていて、ビアンカは思わず素直に礼を言った。

「そういえば……アンタの母親、エヴァもこんなふうに髪のアレンジとかしてた?」

「……さあな」

一瞬、バージルの目が僅かに揺れたように見えたが、すぐにいつもの無表情に戻る。

「……そう」

ビアンカはそれ以上何も言わなかった。

ただ、バージルが思い出に思いをはせているのは、確かに感じ取っていた。
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