第12章 守られること
ビアンカは冗談めかして、自分の腹に手を当てる。
そして、いたずらっぽく微笑みながら、バージルに問いかけた。
「もう一人、作ってみようか?」
バージルの眉が、わずかに寄る。
それだけで、彼が何を考えているのか手に取るように分かった。
(……また騒がしいのはごめんだ、って顔してるね)
まるでそう言わんばかりの表情。
ネロが幼かった頃の喧騒を思い出したのだろう。
――夜泣きに振り回され、幼児特有の無鉄砲さに振り回され、ダンテの無責任な茶化しにも振り回され……
今、ようやく静かになった家で、再びあの騒がしい日々を迎えるのかと考えているに違いない。
「……」
バージルは、しばらく沈黙する。
しかしそれは既にビアンカにとっては予想外だった、即答で断るか嫌がるかすると思っていたからだ。
「いやだ」と即答しないあたり、心のどこかで考えている節があるのかもしれない。
ビアンカは、口元を押さえながら笑う。
「冗談よ、冗談」
バージルは、彼女をじっと見つめたまま、何も言わない。
そして、軽く目を伏せて、ため息をついた。
「……そうか」
ただ、それだけを返す。
けれど、ビアンカは確信した。
一瞬でも、本気でちゃんと考えたのだ。この男は。
それが可笑しくて、彼女はさらに笑みを深めるのだった。