第12章 守られること
夜も更けた頃。
ビアンカはリビングで紅茶を飲みながら、バージルと並んで座っていた。
普段なら気詰まりになりそうな静寂だったが、いつの間にかこの距離感にも慣れつつある。
本を読みふけっていたはずのバージルがふと、顔を上げた。
それはまるで、何かに気づいたような仕草。
「……どうかした?」
問うても、彼は何も言わない。
ただ、扉の向こうの闇を見つめている。
だがビアンカが耳を澄ませても、何の音もしない。
静寂の中に、不穏な気配など……と思った、その瞬間。
遠くで、何かが弾けるような音がした。
それは、断末魔の叫びのように聞こえた。
……悪魔の?
ビアンカは目を瞬かせた。
そして、ふと気づく。
──この人、わざわざアタシに言わないだけで、ちゃんと守ってくれてるんだ。
じわりと温かなものが胸に広がる。
ビアンカは、バージルに向かってふわりと笑った。
「ありがと」
バージルは相変わらず、無言だった。視線もいつの間にか本に戻っている。
でも、彼の纏う雰囲気は初期に比べて随分柔らかくなっているように感じられた。