第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
閻魔刀を握る手に、力がこもる。
ビアンカとの契約。
それは、悪魔としての力を補強するものだった。
バージルはその変化を、確かに感じていた。
「バージル、街の悪魔は俺に任せていいぜ。アンタはネロの方へ」
ダンテの声が響く。
バージルは浅く頷くと、目にもとまらぬ速さで抜刀し、そして納刀した。鍔と鞘がぶつかり合うカチン、という音とともに街の中央にそびえたっていた地獄門が粉々に切り裂かれ、崩れ落ちた。ヒュウ、というダンテの口笛を聞きながらさらに兄は地を蹴った。
目指すは、大聖堂の頂き。
その高さを利用し、≪神≫と同じ高度まで一気に跳躍する。
風が轟き、世界が瞬時に遠のく。
目の前に、巨大な神の像がそびえ立つ。
その中心には、ネロが囚われているはずだ。
「神と、神を超えた神の子……」
それはかつて、フォルトゥナを訪れたときにあった男・サンクトゥスに告げた言葉。
「貴様らはどちらかを選ぶことになると俺は告げたはずだ」
ある意味それは彼の人生を変えてしまったものだが、勝手に変な解釈をし、愚かな選択をしたのは彼自身だ。
「だが、見誤ったな」
サンクトゥスの野望は、結局のところ偽りの神にすがるだけのものだった。
スパーダの力を崇めることしかできなかった。
その過ちを、今ここで終わらせる。
バージルは閻魔刀を構え――
一閃。
青く輝く魔力制御の宝玉の一つが砕けた。
≪神≫の動きが鈍る。
次の瞬間、さらにもう一つ。
そして次々と、魔力の要を断ち切る。
(……軽い)
異様なほど、体が軽い。
魔力の巡りが違う。
あの時よりも、ずっと。
ビアンカの魔力が安定してきているのが、はっきりとわかる。
彼女との契約によって、彼自身の力もまた強化されていたのだ。
「サンクトゥス」
彼は、静かに呟く。
「貴様の愚行も、ここまでだ」
そして、さらに高く跳躍する。
狙うは、最後の要。
今度こそ、完全に終わらせるために。