第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
ダンテは半壊した街を眺めていた。
閻魔刀を取り戻した。
地獄門の稼働も解除した。
だが、まだ戦いは終わらない。
街中には、すでに放たれた悪魔たちが暴れ回っている。
そして何より、ネロが、彼の幼なじみのキリエが、≪神≫に囚われている。
ダンテは剣を肩に担ぎ、息を吐く。
(さて、次は――)
「アンタは街中の悪魔をお願い」
唐突に響いた、聞き覚えのある声。
「……ん?」
振り返ると、そこにいたのはビアンカだった。
「おいおい、こんな時に無理すんなよ」
ダンテは眉をひそめる。
どう見ても彼女は本調子ではない。
一目でわかるほどに魔力の流れが不安定だった。
それでも、ビアンカは構わず前に進む。
そして、その不安定な魔力を一気に展開した。
「……待て、何を……!」
彼女の口から、あのラテン語の言葉が紡がれる。
「CUPIDITAS MEA AETERNA」
瞬間光の魔法陣が広がった。
空間が揺れ、一筋の閃光が収束する。
それは、物理的な距離を超えた召喚。
そして、その光の中から現れたのは。
「……バージル!?」
驚愕に目を見開くダンテ。
それまではるか遠くで≪神≫の足止めをしていたはずの男が、一瞬でこの場へと引き寄せられていた。
「義姉さん、アンタ……」
ダンテは思わず呆れたように笑う。
「兄貴と契約したってのかよ」
ビアンカは、バージルの顔をまっすぐに見つめていた。
「……ネロを助けて」
その声は震えていたが、決して揺るぎないものだった。
息子を救うために彼女は、迷わずこの選択をしたのだ。
ダンテは肩をすくめ、そしてバージルへと目を向ける。手に持っていた閻魔刀を差し出しながら。
「さぁ、どうするよ? 兄貴」
バージルの瞳が、鋭く光を宿した。
次の瞬間、彼は閻魔刀を握りしめ、前へと踏み出した。