第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
バージルの胸に、サンクトゥスの言葉が重く圧し掛かる。彼の冷徹な視線が、まるでバージルの内面を剥き出しにしていくかのようだった。サンクトゥスはその瞬間の空気を楽しんでいるかのように、ゆっくりと続ける。
「貴様なら理解しうると、思っていたのだがな」
サンクトゥスの言葉に、バージルは表情を変えることはない。その瞳の奥には、かつての自分が抱いた信念と、今の自分が感じている現実が交錯している。サンクトゥスが触れた言葉に、かつての自分を思い出しながらも、今のバージルにはもうその信念をそのまま貫く気はなかった。
「力が全てだと、確かに言った」
その声は低く、しかしその中には確固たる意思が込められていた。
「だが、あれから俺の中で変わったものがある」
バージルは一瞬、過去を振り返るように目を閉じた。その後、再びサンクトゥスを見据え、冷徹な眼差しを向けた。
「あの時は、何もかもを超越して、自分だけを求めていた。だが今、俺には守るべきものがある。それが家族であれ、何であれ」
バージルは肩をすくめ、軽く舌打ちをした。
「お前が言うように、力は確かに重要だ。だが、それだけでは終わらない」
その表情は変わらず冷徹で、だがそこにはかつての無機質な力への執着だけではない、深い思慮が感じられる。
「だから、俺はお前の言う"力"の先にあるものを求めている。家族を守るため、そしてあの者にとっての力を」
バージルは言葉を続ける。
「"全て"だと語ったあの頃の俺ではない」
その声には、どこか悟ったような響きがあった。バージルはサンクトゥスに背を向けることなく、再びその剣を握り直し、戦いの準備を整えた。「俺の求める力は、ただの力ではない。それを超えている」
彼はそのまま、サンクトゥスを見据え、言葉少なに続けた。
「お前が言う力は、もう俺に必要ない」