第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
轟音とともに、衝撃波が周囲を吹き飛ばした。
バージルは刹那、足を踏ん張るが――
次の瞬間、≪神≫の巨腕が振り下ろされる。
「……ッ!!」
直撃は避けた。
だが、瓦礫が飛び散り、逃げ場を狭める。
いつもなら、容易に見切れる動きだ。
しかし、
(……遅い)
己の体の反応が、わずかに鈍っているのを感じる。
原因は、分かっている。
ビアンカに魔力を分け与えたせいだ。
魔力だけでなく己の寿命を縮めてまで彼女の生命力を無理やり繋ぎ止めた。
その代償でかつてないほど、内側が空っぽに近い。
(……だからといって)
ここで引くつもりはない。
バージルは即座に幻影剣を展開し、≪神≫の動きを封じようとする。
圧倒的な力で、幻影剣が打ち砕かれた。
防げない。
このままでは、突破される。
そして≪神≫は、ゆっくりと街へ向けて飛び去ろうとしていた。
バージルは、拳を握りしめる。
いくら奴を抑え込もうとしても、今の力では足止めすらままならない。
だが、ここで諦めるつもりもない。
(時間を稼ぐ……何としても)
彼は再び剣を握り直した。そこへ教皇サンクトゥスが現れた。
彼は、バージルの目の前に立ち、その冷徹な眼差しを向ける。彼の姿勢は威厳に満ち、まるで全てを見透かしているかのようだ。彼の言葉が空気を切り裂き、鋭くバージルの心を突き刺す。
「貴様を突き動かすものはなんだ?」
サンクトゥスは静かに問いかける。その声には無慈悲な響きがある。
「息子が心配か? 妻への愛情故か? すべて、くだらぬまやかしだ」
彼は一歩進み、バージルの目の前に立つと、その言葉はさらに鋭く、揺さぶるように続けられる。
「あらゆるものを超越する”力”こそが全てだと」
サンクトゥスの口元に、冷笑が浮かぶ。
「それを言ったのは他でもない貴様であろう? それなのに、今はこの《神》に刃を向けるというのか?」
サンクトゥスはゆっくりと間を取ると、その視線を一層鋭くし、バージルの顔をじっと見据える。
「その結果がそのざまか? 貴様が求めた力とは、そんなに脆いものだったのか?」