第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
轟音が響いた。
崩れ落ちていく瓦礫の中、巨大な石像がゆっくりと動き出す。
その中心に、ネロの姿があった。
≪神≫の一部として、取り込まれていた。
バージルの目が鋭く細められる。
その手には、閻魔刀がない。
奪われたのだ。
「おいおい、俺達の≪親父≫が街を滅ぼしに行っちまうぜ」
皮肉げな声が響いた。
バージルはそちらへ目を向ける。
10年以上ぶりの、双子の再会。
赤いコートの男――ダンテ。
「貴様は指を咥えて見ているだけだったのか」
言葉には棘があった。
だが、ダンテは肩をすくめて言う。
「お前んとこの坊やがまだまだやる気だったんでな」
「……」
バージルはあきれて何も言えなかった。
だがそんなことを問い詰めている暇はない。
今、この瞬間にも≪神≫が起動し、街へと向かおうとしているのだから。
「チッ……」
バージルは低く舌打ちした。
視界の隅で、奪われた閻魔刀を媒介に、町中の地獄門が開いていくのが見える。
次々と悪魔らしき黒い霧が這い出てくる。
「……ならば」
選択は決まった。
「貴様は行け。俺はここでこいつを止める」
バージルは、一歩踏み出し、巨大な≪神≫を見上げた。
ダンテは軽く息を吐き、ふっと笑う。
「……頼んだぜ、兄貴」
そして、彼は街へと走り出した。
バージルは、再び≪神≫を見据える。
奪われた閻魔刀。
取り込まれたネロ。
そのどれもが、今の彼の手の届かぬ場所にある。
しかし、足止めはできる。
やるべきことは、ただ一つ。
バージルは幻影剣を構えた。
静かに、冷徹に。
「貴様をここで終わらせる」
そして、≪神≫との戦いが、始まった。