第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
「……やはり、お前だったか」
静かな声が響く。
ネロが顔を上げると、そこにはバージルが立っていた。
「……親父」
バージルは、ネロが手にしている閻魔刀を見つめる。
そして、ゆっくりと息を吐いた。
「……どうやら、お前が持つべきらしいな」
ネロは、それをどう受け止めていいか分からずにいた。
だが、閻魔刀を握る手には、確かに新たな力が宿っている。
ネロは荒い息をつきながら、手にした閻魔刀を見下ろした。
信じられないほどしっくりくる感触。まるで初めから自分のものであったかのような馴染み方に、ネロは不思議な感覚を覚える。
(……待てよ)
だがネロはふと、目の前の男に視線を向けた。
「……おい」
バージルは静かに彼を見返す。
「何だ」
「いや……その……」
ネロは言いよどむ。
当然のことながら、バージルは閻魔刀を失った状態だ。
これまで彼の代名詞のように扱われてきたその刀を、今は自分が持っている。
(こいつ、今丸腰じゃねぇか……?)
あの悪魔じみた父親が、武器を持たずに戦う姿など想像できない。
「……それ、いいのか?」
ネロは少し遠慮がちに尋ねた。
バージルは一瞬だけ眉をひそめ、そして鼻で笑った。
「?」
「それがなくとも、俺は強い」
そう言い放つと、彼は指先をわずかに動かすだけで――
バージルの体の周囲に大量の幻影剣が召喚された。
それはあまりにも一瞬の出来事で、ネロは目を見張るしかなかった。
「ッ……!!」
大量の剣が、宙に浮かびながら静かに回転する。
バージルの手のひらがほんのわずかに動くと、それらはまるで意志を持つかのように整然と並び、ネロを取り囲むように配置された。
(……っ、何だよ、こりゃ……!)
ネロは思わず一歩後ずさる。
「半人前の四半魔に、遅れをとることなどない」
バージルの冷たい青い瞳が、ネロを見据える。
その圧倒的な気迫に、ネロは思わず息をのんだ。
(やっぱこいつ……化け物じみてやがる)
たとえ閻魔刀を失おうとも、この男の実力が衰えることはない。
むしろ、武器の有無など関係ないとばかりに、幻影剣だけで圧倒的な戦闘力を誇っている。
ネロは改めて、自分の父親の強さを再確認するのだった。