第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
ああ、一年前、悪魔に襲われたあの時の。キリエの絶叫が思い出される。キリエの家族が悪魔に襲われたときは何もできなかった、悔しくて親父に頼み込み、血反吐を吐くくらい痛めつけて強くしてもらった。
なのにあの時も。もう少しでキリエに大けがを負わせてしまうところだった。
親父の背中は遠すぎる。どうして届かないんだ。ただ守りたいものを守りたいだけなのに。
(キリエ……)
何かが、身体の奥底で爆発するように燃え上がる。
「オレは……こんなところで……倒れるわけにはいかねぇんだよ!!」
ネロが心の奥底からそう叫んだとき、確かに共鳴する存在があった。
そして同時に、ついに四半魔として覚醒しようとするその気配を、そう遠くないどこかにいたバージルが、感じ取った。
「……!」
彼は目を細め、振り向く。
「この力は……まさか……」
だが、それだけではない。
彼の腰にある閻魔刀が、突然共鳴し始めた。
「……?」
バージルの手をすり抜けるように閻魔刀が、突如として消えた。
彼が驚きの表情を浮かべた次の瞬間、ネロの目の前に、閻魔刀が召喚される。
「なっ……!?」
それは親父の、何をするときでも絶対に手元から離さなかったあの。
『パパ、その剣、かっこいーね』
『これは刀だ。そして、子供が触れていいものではない』
『そうだよ、ママなんかこれで何回刺されそうになったか!』
どうでもいいことを思い出している自分にどこか自嘲するような笑みをこぼし、ネロは全身の力をかき集めて腕を伸ばし、その柄をつかみ取った。
体中に沸き起こる、圧倒的な力。
ネロの瞳が、赤く輝く。
そして閻魔刀を媒体に、彼は初めて“魔人化”を果たす。
「お前ら全員……ぶっ潰してやる……!!」
咆哮とともに、ネロの新たな力が解放された。
魔人化したネロの一撃が、人造悪魔を粉々に吹き飛ばす。
「な、な。なんだ!?」
アグナスが戦慄する。
「オレのこと、実験体とか言ったよな……?」
「ひ、ひィッ……!!」
「オレは……誰のものでもねぇ!!」
ネロが閻魔刀を振りぬくと、斬撃が壁を吹き飛ばす。
アグナスは、悲鳴を上げながら逃げ出した。
それを追おうとするも、魔人の力が暴走しそうになり、一度膝をつく。
息を切らしながら、ギリギリで意識を保つ。