第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
フォルトゥナの街は、混乱に包まれていた。
轟音と悲鳴、建物が崩れる音、悪魔の咆哮。
夥しい数の悪魔が街を蹂躙し、人々が逃げ惑っている。
教団騎士たちも応戦していたが、数が多すぎる。
バージルは家に留まるつもりだったが、もはやそれどころではなかった。
静かに閻魔刀を抜く。
「……」
それだけ呟くと、彼は目にも止まらぬ速さで悪魔たちを切り捨てていった。
一閃ごとに、悪魔の群れが消滅していく。
しかし、その戦闘の最中――。
「バージルさん!!」
遠くから、キリエの叫び声が響いた。
彼女は必死にこちらへ駆け寄ってくる。
その顔には涙が滲み、焦りと絶望が入り混じっていた。
「ビアンカさんが……!!」
バージルの動きが、ピタリと止まる。
「何があった」
「クレド兄さんが、あの男と関係があるって理由で捕らえました……!」
「……あの男?」
「赤いコートの……」
「このままだと、魔剣教団に処刑されてしまうかもしれません……!!」
キリエは涙ながらに訴える。
バージルは一瞬だけ考えた。
ここ10年は顔すら見せなかった弟が、まさかこんな形で現れるとは。
「……分かった」
短く答えると、バージルは踵を返し、大聖堂へと向かった。
彼がそこに辿り着いた時、ビアンカの姿はすでになかった。
「ネロ」
しかし、ネロが残っていた。
レッドクイーンを持ち、傷だらけになりながらも立っていた。
彼の青い瞳は、ただひたすらに怒りと焦燥に燃えていた。
「……あの赤いコートの男を追う」
ネロが息を切らしながら言う。
「奴はどこへ連れていかれた?」
「……わかんねぇ。 でも、罪人はいつも教団本部の地下に連れていかれるはず」
そう言いながらも、ネロの拳は震えていた。
バージルは静かに彼を見つめる。
そして、短く言った。
「お前の母親は俺が対処する。後ろのことは気にするな」
ネロは驚いたように父を見上げる。
「……親父」
バージルは無言で閻魔刀を収め、背を向けた。
「行け」
その言葉に、ネロは歯を食いしばりながらも力強く頷いた。
「……ありがとう」
そして、彼は走り出す。
バージルは、そんな息子の背中を見送りながら、閻魔刀をにぎる手に力を込めた。