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【DMCバージル夢】貴方と生きる【第二章開始】

第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)


 騎士団本部の特別観覧席。
 バージルとビアンカ、そしてキリエの3人が並んで座り、剣術大会の試合を見下ろしていた。
 といっても試合とは名ばかりの一方的な蹂躙劇が繰り広げられていた。

 「……えぇと……これは……」

 キリエが言葉を探していると、隣で腕を組んでいたビアンカがため息混じりに肩をすくめた。

 「まぁ、当然こうなるわよね」
 「……そもそも、こんな大会が開かれてることも私知りませんでした」
 「ああ、それね」

 ビアンカは頭を押さえるように笑う。

 「それ、ネロも"なんで俺がキリエの護衛を勝ち取らなきゃならねぇんだ" ってブツブツ言ってたわ」
 「……でしょうね」

 キリエは苦笑する。
 そして、ふと気づいた。
 もう一人、隣に座るバージルが微動だにせず試合を見ている。

 「……バージルさん?」
 「……」

 彼は口を開かないまま、黙って試合を見続けていた。
 いや、試合ではない。
 ネロの動きを観察している。
 それが、はっきりと分かる。

 「……楽しんでる?」

 ビアンカが少し茶化すように言った。

 「フン」

 バージルは静かに息を吐く。

 「何の意味もない」
 「ふぅん?」

 ビアンカが意味ありげに目を細める。

 「じゃあ、さっきから腕を組んでじっと見てるのは?」
 「……」
 「試合前に"所詮、相手にならんだろう" って言ってたのに、さっきから剣の軌道を目で追ってるのは?」
 「……」
 「楽しんでるでしょ」

 バージルは何も言わなかった。
 ただ、その沈黙が図星であることを示していた。
 キリエは思わず微笑む。

 「……ネロは、バージルさんに認められたいんでしょうね」
 「だろうねぇ」

 ビアンカがゆるく肩をすくめた。

 「問題は、その親が素直じゃないことだけど」
 「フン」

 バージルは興味がないというように顔を背ける。
 だが、その横顔には明らかに"無関心" とは違う何かがあった。
 そして、次の試合が始まる。
 またネロが、一瞬で相手を沈めた。
 観客席がどよめく。
 キリエは少し困ったように呟いた。

 「……これ、いつまで続くんでしょうね……?」

 ビアンカは静かに笑った。

 「ネロが優勝するまで、でしょ」
 「……」

 バージルは、ただ黙って、次の一太刀を見守っていた。
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