第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)
——試合開始の合図が鳴り響いた。
その瞬間、刃が空気を切り裂く音と共に、鋭い閃光が観客席にまで届く。
「……は?」
観客席から、誰かの呆然とした声が漏れた。
——すでに、一人目が地面に倒れている。
「おい、待て待て待て……」
「まだ開始から10秒も経ってないぞ……?」
「どうやって倒したんだ……?」
観客たちがざわつき、目を見開いてその光景を目に焼き付けている。ネロは無表情のまま、何事もなかったかのように剣を払うと、軽く肩をすくめて言った。
「次、来いよ」
——その瞬間。
次々に、試合の度に時間が飛ぶように、相手が倒れていく。どんな反応も、抵抗も許さず、全てを蹴散らしていく。
「ぎゃああああ!!」
「くっ……! ま、待って……!」
ドゴォッ!!
「うわぁぁぁ!!」
——試合が進むほど、まるでそれが茶番にしか思えなくなる。
——圧倒的すぎる。
「お、おい……」
「……これ、もうネロに護衛決定でよくね?」
「いや、"護衛を勝ち取る"って言ってる大会だから……」
「勝ち取るも何も……勝負になってねぇじゃん……」
騎士団の面々はただただ呆然としていた。誰もが言葉を失い、見ているものが現実なのかもわからない様子だった。
ネロは、すでに5人を瞬時に沈めている。その剣の軌道は完全に無駄なく、すべてが一撃で決まる。まるで全てがシナリオ通りに進んでいるかのように、相手は一切反応できずに倒れていった。
——これは"本気"だ。
ネロは、どんな相手にも譲るつもりがない。
6人目の対戦相手が、何とか剣を構え直し、息を切らして立ち上がる。その目には焦燥が見え隠れしている。
「……まだやるのか?」
ネロは、まるでそれが暇つぶしのように、冷ややかな声音で言った。
「お前、"キリエの護衛役"になれると思ってんの?」
「……っ!!」
その言葉に、相手は唇を噛みしめた。だが、動揺しているのはそれだけではない。彼の目にはすでに敗北の兆しが見え始めている。
その瞬間、ネロの剣が再び、鮮やかに振り抜かれた。
6人目、倒れる。
その動きの速さ、剣の切れ味、相手に抵抗する隙を与えないその一撃。
「かったるい! 全員まとめてこいよ!」
——そして、この後も、彼に立ち向かおうとした全員が次々に倒れていった。