第9章 少年は剣を取る(DMC4本編直前まで)
訓練を終えたネロは、騎士団の仲間たちの雑談を聞いていた。
「なんでも、地方の慰問でキリエが長期間外に出ることになるらしい」
「それで希望者の中から、実力で護衛を決めるんだと」
「正直、俺も参加してみたいぜ……あの人の歌、ほんとにすげぇからな……」
——その瞬間、ネロの動きが止まった。
「……は?」
振り向くと、騎士仲間たちは 「あっ」 という顔をしている。
「おい待て、それどういうことだよ」
ネロは 腕を組み、眉をひそめた。
「なんでキリエの護衛を"希望者の剣術大会" で決めるんだ?」
「え、いや……その、騎士団長が"希望者の中で最も優れた剣士を選ぶ"って……」
「……"最も優れた剣士" って、俺以外にいなくね?」
——場が静まり返る。
誰もが ネロの言葉を否定できなかった。
フォルトゥナ騎士団の中で、剣の技量においてネロを超える者はいない。
「そもそも俺が行くべきじゃねぇの?」
ネロは 片手を上げながら、呆れたように続ける。
「俺、キリエの幼なじみだぞ? つーか、俺以外にあいつを守れるやついるのか?」
「それは……まぁ……」
「そもそも"護衛を勝ち取る" ってなんだよ。護衛ってのは実力があるやつがやるもんだろ?」
「だから実力で選ぶって話じゃね?」
「俺がいるのに、選ぶ必要ある?」
「…………」
誰も言い返せなかった。
「……はぁ、もういいや」
ネロは 頭をかきながら、ソファに腰を下ろす。
「つーか、キリエはこれ知ってんのか?」
「どうだろうな。彼女、最近忙しいし……」
「いや、知ってたら、さすがに何か言うだろ」
「……」
ネロは ソファから立ち上がる。
「出るよ、出ればいいんだろ」
——俺がキリエの護衛役を"勝ち取る" のか……意味わかんねぇ。