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【DMCバージル夢】父と子と

第3章 閑話休題


「……で、それが俺の母親かもしれない唯一の人間だって?」

 そうして時は現在に戻り。ガタガタと揺れる移動事務所の座席の上でネロは呆れかえってしまった。彼から聞く限りでは「大酒飲み」「料理下手」その他挙げていくときりがないがおおよそネロから見て魅力的な女性とは思えなかった。
 少なくとも、彼が大切な恋人として認識しているキリエとは天地ほど差があるように思えた。(これについては彼氏としての欲目もあるかもしれない。)自分から見て何となく冷酷・几帳面・傲岸不遜といったイメージのあるバージルが一番嫌いそうな人種ではないのだろうか?

「そうだな、正直に言えば俺が奴に抱いていたイメージは最悪に等しい。用が済めばさっさと縁を切ろうとすら思っていた」

 彼女をなぜ殺さなかったのかと問われれば少し説明に困るが。彼にとって彼女は切り殺すほどにまでは目障りな存在ではなかったのだ。多少なりとも不快に思う言動等はあっても殺意に変わるほどにパーソナルスペースに土足で踏み込まれたわけでも、何か危害を加えようとされたわけでも、裏切りの気配を感じたことがあるわけでもなかった。ある一点において、彼女は誠実だったのだ。距離感は保ち、必要以上に関わってくることがなかった。だからバージルは自分のやりたいようにやったし彼女もそれについて何か言ってくることもなかった。
 ああいやでも。

「むしろ一度本気で殺そうと思ったこともあったな」

 ネロが心底ドン引きする気配をバージルは横目で確かに感じた。

「なんで俺が生まれてきたのかマジでわっかんねぇんだけど」

 彼がため息とともに吐き出された言葉は超がつくほどに正当な感想だった。確かに今話した内容ではとても、(結果を先に聞かされているにも拘らず)そういう関係になったとは信じられないだろう。契約途中でバージルがビアンカを切り殺した、なんて結果になっている方がむしろ自然だと感じる程ではないか。
 しかし事実バージルもネロが自分の息子だとダンテに肯定された瞬間には最高に戸惑った。息子が生まれていたなど知る由もなかったのはもちろんだが、何より身に覚えが一つしかなかったのだ。
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