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【DMCバージル夢】父と子と

第4章 孤児院にて


 魔剣教団騎士団長クレドの実妹であり、魔剣教団が主宰する大祭の前座として聖歌を奉納するほどその実力はもちろんや周囲からの信頼も厚かった歌姫キリエ。

 彼女はその十数年の半生 の中で早くに両親を悪魔に殺されていたのだが、さらに今回の事件で最愛の実兄すらも喪っていた。それでも二、三歳年上である彼女は傷心する暇を持つこともなく義弟ネロと共に時間を惜しんでフォルトゥナを駆け回り、指導側のポジションに慣れていない彼のサポートに回りつつ事態の説明・収拾と状況の把握。更に復興の指示や援助にまい進した。

 結果、二人の不眠不休の努力の甲斐あり都市は早急に修復を終えており、悪魔による傷は残るし経済的にも打撃は大きいままではあるがネロはフォルトゥナの顔役として皆に受け入れられていた。その頃には孤児院の院長兼遺族の相談役として落ち着いていたキリエとはその頃から、義姉ではなく恋人として彼と共に暮らすようになる。

 嗚呼確かに、ネロが絶賛するだけのことはある。伝聞の経歴だけでも本当に実在する人間なのか怪しいほどに慈愛に溢れた人物なのだろうと思っていたが、なるほど目の前に立つこの女性はその博愛のイメージに相違ない出で立ちをしていた。艶やかな茶髪、まだあどけなさも残した柔らかい顔立ち、そこに浮かぶ穏やかな微笑み。世間に存在する悪意というものをその全身で打ち破るような清廉さもある。

 そう、まるで……エヴァの若い頃のようだ。父スパーダと出会った頃まだ年若い娘だったという彼女は父から見てそれはそれは純粋で無邪気で、自分にないものを埋めてくれるような愛らしさだったという。

 そう思えば、到底まともと言えない性格をしていた自分の種とビアンカの器から生まれたこの青年が、多少はひねくれてもまっすぐまじめに育った理由が納得できる。
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