第3章 閑話休題
だが彼女はむしろ瞳を輝かせて、自分の話を聞いてほしいようだった。そんな彼女を黙らせ、部屋から追い出した自分は今までになく辛抱強かったと思う。無意味な殺生は好んでするわけではないものの、普段なら少しでも不快に思った時点で切り捨てているというのに。
生まれてきた意味、という言葉に少しだけ興味を惹かれたからかもしれない。興味を惹かれたというよりは嘲笑する意味の方が強かったかもしれないが。
生まれてきた意味? そんなもの、あるわけがない。性行為を交わした男と女の間に結果として子が成されたというだけのことではないのか。そこでは意味も、愛も、必ずしも理由とはなりえない。あるのは性行為という原因と、出産という結果だけだ。バージルはそう考えていたし、本気でそうだと感じていた。そうでもなければ、あの日自分が一人で取り残されたことにすら何か意味を見出さなければならないではないか。そんなことをできるほど彼は夢想家ではないのだ。