第3章 Episode:3
ナギを珍しく素直に送り出したリアヴィは残っていたほんの少しの書類に取り掛かった。
「…オイハンジ」
「なんだい?」
機嫌がいいのか悪いのか…。
正直言って全くわからないが、不機嫌というより嫉妬の感情のほうが大きいんだろう。
かすかに言葉から「エレンめ…」と怨念のような憎しみがただ漏れしているのが丸わかりだ。
「…書類の量、少なすぎじゃねぇか?
もしナギーアがやってくれてたとして、それは俺が寝込んでいたときだろう?なにかあったのか。」
「ん~?それはねぇ…。
ナギが『え、先の分まで一応やっておかないと回復した後絶対リヴァイ無茶するから。』って、今日の分までやってくれてたよ。寝る間も惜しんで。」
寝る間も惜しむ…ということは、直訳すると徹夜して終わらせた。ということだ。
別にお前が思っているような無茶はしねぇが、流石にやりすぎだろ…。それで面倒臭モードになったって言うなら流石に自業自得過ぎねぇか?
まぁ、やってくれたことに感謝はしているが…。
「…ハァ…。
折角気を紛らわせようとしたのにこれじゃ氏名書いて終わりじゃねぇか…。」
「いやどんだけ嫉妬してるんだい」
嫉妬なんて子供じみたことしてねぇ…とすぐ否定したかったが、そこまで気が付かない馬鹿ではない。
今自分が抱えているこのモヤモヤは、エレンに対する憎悪のような嫉妬心だということ。
それが制御できないほど自分がまだまだ未熟だということ。
チッ…くっそ情ねぇ。
…けどこの気持ちは何だ?
嫉妬心とはまた別の…もっと暖かいナニカ。
…こういうのに疎い俺には分からねぇ。
自然に俺自身が気づくのは気づけるほどに大きな、より明確なものになってからがいい。
ただの貪欲な俺からの勝手な願望…。
まだナニカの内容も知れてねぇ馬鹿が何いってんだ。
とりあえず書類を片付けたら掃除をしよう。
そう決心したリヴァイであった。