第3章 Episode:3
ガチャ、とドアを開けると、向かいの壁にかなり不機嫌なリヴァイが寄りかかっていた。
向かいの壁…ってことは今の会話を聞かないようにしてくれてたのか。
彼なりの分かりにくい不器用な優しさに、心が温まる。
「来やがったなこのチビ」
『残念ながら君よりはチビじゃないかな~』
「チッ…。
今回の議題で、お前の憲兵への異動が議論されるらしい。」
イライラしてるからまともな返事してくれないかと思ったけど、蓋を開けてみればしっかりと引きこもりから引き摺り出した理由が飛び出てきた。
………ん???
私、憲兵への異動………???
『え、ちょっと待って。
私が数日引き籠もってた間に何あった?
私なんかやらかしちゃった?え???』
「落ち着けナギーア。
特に何もないハズだ。
急にエルヴィンから会議の話だと思ったら、テメェが憲兵に異動するかもとか抜かしやがって。」
疑問符が頭に大量発生しているナギーアを優しく落ち着かせるように言った後、現状を簡潔に分かりやすく説明してくれた。
『なるほど、ただの物欲しさにだけ私をゲットしようとしてるわけだね。なるほどなるほど。
…馬鹿なのかな???』
「納得したと思ったら急に毒舌かよ。
忙しいやつだな。」
『え?だって1ヶ月後には壁外調査だし、その前には新兵たちも入ってくるし、私が必要な巨人の実験なんてまだ終わってないし、内地なんて行ったら調査兵団と関わることなんて会議やら宴会やらで来た幹部たちだけじゃん。新兵たちにもペトラ達にも会いたいんだけど。』
口に出せば無数に調査兵団に未練が残っている事が分かる。
そもそも私には“巨人を殺し尽くして壁の外の自由で未知な絶景を見る”っていう子供の頃からの夢がある。
きっと私が思っている事以外でも私は必要とされているんだ。
今ここで、憲兵になんて行かない。
あのとき、壁が破られて犠牲になったトロスト区・シガンシナ区の方たちためにも、ウォール・マリアの方たちにも、口減らしで死んでしまった方たちと、その遺族様方にも。
今迄に散っていった、同胞たちのためにも。
報いなければならない。
あの時の犠牲は無駄じゃなかったんだって。
「そういうと思った。
エルヴィン所行くぞ。」
『ーあぁ。』