第2章 Episode:2
「ナギは戦いのセンスと顔面だけじゃなく、性格も生真面目で勤勉、ましてや頭もいいからね~。
強欲な憲兵には是非とも欲しい逸材なんじゃないかい?」
「…そもそもこういうのは本人の意志が尊重されるべきだろうが。なに勝手にお偉いさん方で決めようとしてやがる。」
その言葉には怒りが滲んでいる。
相当憲兵の身勝手さが不服なのだろう。
「…ナイルにもう一度聞いてみよう。
どちらにせよ、幹部全員出席は確実だからな。
ハンジ、リヴァイ、ナギーアを頼んだぞ。」
「…了解だ。」
「了解。」
*
解散した後、食堂で小会議(?)を始める事にしたハンジとリヴァイ。
「…連れ戻すっつってもな…。
アイツがどういう心境で訓練場に籠もってっかもよく分からねぇし。」
ぐいっと温かいままの紅茶を口に含む。
ほんのり甘い香りが口に広がり、幸福感を与えられる。
「悪くねぇ…」
「どちらにせよ、適当に訓練場に突撃しても反応されないことは分かってるんだよね。
それにナギは自分で決めたことを曲げたことがあまり無い程の強さを持ってる。」
「チッ…クソ厄介じゃねぇか」
「いつもだと称賛できるんだけどね…。
こういう時の心の強さはうーん…ってなっちゃうよね。」
ナギーアは基本口は固く、無表情で無口、それでも「壁の外」への意志の強さは半端ない。いわゆる壁外ヲタクだ。
あのクソ高ぇ壁はいつか終わりがあって、その向こう側には火の水やら氷の大地やら砂の雪原、んで極めつけには商人が一生かけても取り尽くせない塩の湖があるんだと。
正直言って俺は信じてねぇ。
壁の向こう側なんてそもそもあるか分からねぇし、そもそも砂の雪原ってなんだ、砂なのか?雪なのか?火の水も理解できねぇ。火と水は一緒になったら火が消えるだろうが。氷の大地…。これは下がツルツルしてんのか?大地っつーことは広いのか?
分からねぇ。
けど分からねぇからアイツは興味を持ってる。
ー全く、よく分からねぇものに興味を持ったもんだ。
「…あ、そうか」
「なにか思いついたのかい?」
「…あぁ。」
リヴァイは口角を上げて悪戯っぽく笑った。