第2章 Episode:2
突如現れた人影の正体はエルヴィンだった。
コイツ図体の割に行動が静かなんだよな…。
「あぁ、ついさっきコイツの声と凄まじいドアの開いた音で起きた。」
「それは災難な目覚めだったね。
今憲兵の方から駐屯兵団、調査兵団、憲兵団で緊急の招集がかかった。団長、兵士長。それから分隊長はお付きの役目がある。」
「んだそれ…。何の会議なんだよ」
「如何にも今はそんなクソッタレな会議なんかより大好きなお嫁さんのことだろって顔だね~」
「うるせぇ黙れ当たり前だろうが。
てか嫁じゃねぇ馴染みだ。」
「妻愛好家でよろしくて!」
ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー言い合う2人こそどこぞの親戚かと思うけどな…(by エルヴィン)
エルヴィンは手に持っていた数枚の書類を2人に手渡し、確認するように促す
「書いてある通り、今回も予算決めと食料の割り振り、異動もある人も居るからもう一度兵士リストを整理する…。それが今回の議題だな。」
「は?いつものことじゃねぇか。なんで幹部全員出席になってんだ」
あからさまに機嫌が悪い。
今は新兵が入ってくる前の忙しい時期だ。
普通の兵士も余裕はないし、兵士長となるとこんな普通の会議に時間をかけるのには勿体ないのだろう。
「…今回の議題で、ナギーアの憲兵団異動も議論されるんだそうだ。」
「…は???」
「オイオイオイオイ待て待て、ナギーアは調査兵団兵士長だよな?最強兵士だよな?そんな戦いの神みたいな奴がなんでゴミ溜めにぶち込まれなきゃいけねぇんだ。」
ナギーアは十数年前から入団している、調査兵団では珍しいいわゆる古参だ。
4年で死亡確率は8割を超える調査兵団では、十数年も生き残っているだけでも貴重な存在だ。
ましてや毎回のように前線に置かれている女兵士。
前線は崩壊、または全滅しやすく、配属され続けて数年と持てば良い方を十数年生き残っている。
間違いなく調査兵団に類を見ない逸材、まさに“戦いの女神”というやつだろう。
それがほとんど武力を必要としない憲兵団に異動など、疑問しか残らないのだ。