第3章 口減らし
「ここです。」
震える声を絞り出し、手を挙げた。
兵士はわたしを見つけると、ため息混じりに眉を寄せる。
「こんな若い女の子まで……かわいそうに。ついてきなさい。」
まさか、自分が選ばれるとは、夢にも思っていなかった。
「待ってください!何かの間違いじゃないですか?サクラが参加するなんて!」
エレンは慌てて兵士を制止しようとする。
しかし、兵士が名簿を再確認すると、そこには確かにサクラ・ダンネベルクの名前が記されていた。
「……そんな……」
エレン、ミカサ、アルミンは困惑と絶望に包まれた表情でわたしを見つめる。
わたしはそんな三人を前に、小さく微笑む。
「みんな、そんな顔しないで。わたしはみんなより先に巨人と戦って、ちゃんと戻ってくるから。そしていつの日か、4人で海を見に行こう」
精一杯の笑顔でそう言うと、三人は涙をこぼしながら抱きついてきた。
その温もりが、わたしの胸をさらに締め付ける。
――壁外へ出たら、あの巨人たちがいる。
きっとわたしは、生きて戻れない。
でも……命が尽きるその瞬間まで、わたしの大切なものを奪った巨人を駆逐するために、戦おう。
心の中で静かに誓った。