第3章 口減らし
避難民たちに「ウォール・マリア奪還作戦」の詳細が伝えられたのは、その翌日のことだった。
作戦に参加する者たちはすでに決まっているらしく、兵士たちは名前を呼び上げ、次々と人々を集めていく。
「僕たちは、年齢的に呼ばれないと思う。」
唯一の家族である祖父が作戦に参加することになったアルミンは、曇った表情でそう言った。
この作戦に参加する者のほとんどは、生きて帰れないだろう――避難民たちの誰もがそう確信していた。
それはわたしたちも同じだった。
だけど、その不安を口にすることだけは避けた。誰もがそれを認めてしまうのが怖かったのだ。
「アルミンのじいちゃんは、きっと無事に帰ってくる。」
エレンが力強く励ます。その言葉に続けて、わたしも声をかけた。
「人類最強って呼ばれてる人も参加するらしいよ。だから、大丈夫。みんなで一緒に帰りを待とう?」
「……ありがとう。」
アルミンは少しだけ表情を和らげた。だが、そのわずかな安堵を破るように、一人の兵士がわたしたちのもとへ歩み寄ってきた。
「サクラ・ダンネベルクはどこだ。」
突然の呼びかけに、エレン達は目を見開いた。
わたしもまた、名前を呼ばれた瞬間、胸がぎゅっと締め付けられるような痛みを感じた。
――わたしも……参加するの?